田舎の料理店「にしむら」
私の故郷には町では美味しさで知られている料理店があります。
看板も宣伝もない、ごく普通の家、大きい通りに面した昔の宿場町にあるような、古い建物は掃除の行き届いた廊下や部屋。なんと言っても外観がスゴイ、入り口の戸は障子の張った引き戸で夏は日よけに　よしづ　が立てられている。まるでタイムスリップしたような料理店である。
隠れた名店ですが、家族で切り盛りしているのでお客様を受け入れるには限りがあるのです。先日の法事には、無花果のきみずあえ、豚の三枚肉の煮豚、7月解禁になった思川の天然の鮎の塩焼き、湯葉のさしみ、湯葉の炊き上げ、大盛り皿に盛られた鮠〔うぐい、はやとも呼ばれている〕のから揚げ、手打ちソバ　これが他所ではなかなか、味わえないだろうと思っているのです。山又山に囲まれたソバの名産地ですのでこれが又美味い。
予約専門ですので、フイっと行っても味わえないのが少し不便ですが、それでも土日は予約でいっぱいのようです。
若女将が運んでくる料理は説明付きで、その度に感心して聞き入ってしまう。最後に出たメロンはなんと失礼にも「本物？」なんて聞いてしまいましたが「宇都宮の市場で最高級品をさかさまにして熟成させてお出ししております」との事、甘味を全体に廻るようにとの事だそうです。
とにかく、よく気を使った若女将と熟成大女将と、研究熱心な息子料理人が切り盛りしている小さな隠れ名店である。　　　　　　　2005年平成17年9月