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我が一家は家の中に舞い込んできた虫類が大嫌いである。特に蝿を目の かたき にして追い散らすのである。新聞を丸めて追いかけたり、手で追い払うしぐさに、シーシーといかにも汚いものを追うように顔まで顰めて追い払うのである。かって、この蝿や虫類はほとんどの場合叩き殺していたのだが、最近は外に逃がすのが常である、追いはらう此方の老いが素早い虫に追いつかなくなったのであろう、と私は推測するのであるが、夫 曰く、ぐちゃっとしたあの気分がなんともイヤなのだそうだ。 どんなときでも私はただ見ているだけなのである。「お母さんはうるさくないのか」と言われると「私は飼ってるの！！」という。私から言わせれば、何がそんなに煩いのか、そんなに騒がなくてもいいのにと思っているから、ただ眺めているだけなのである。 ところが12月のはじめ暖かい太陽に背を向けて新聞を広げていると、ブーン、ブーンと大きな蝿が頭上を飛び回っているのである。暫く眺めているとなんとも うるさい、だから家族の真似をして新聞を丸めて ひょい ひょいと叩いてみたが私のような、のろまでは、蝿に遊ばれてるみたい、そんな訳で暫く観察することになった。 彼は暫く、部屋の中を飛行していたが、あっちこっちに止まって、網戸に一休みをした。そこで外に出そうと網戸をあけたのであるが、ところがである、ガラス戸にはさまって、狭い隙間でブンブンと扇風機のような音を立て出した。いくら手を貸しても出ようとしないのか、出られないのか、右往左往している。随分疲れるだろうな、あんなに全身で動いている。そのうちにいなくなっちゃった。隙間から出て行ったんだと思っていると、暫くして下のほうでフウン、フウンと小さな音がするので、振り向くとレールにぴったりくっついて弱っているような感じがする。死んじゃったのかな、紙で挟んで外に、手を放したとたんに ふわぁ と飛んでいった。 私としては一安心、それは 外に出たのがか？それとも死ななかったからか？どちらかな？もしかして、うるさくなくなったから安心したんだ。とすると以前はどうして煩さを感じなかったのか、きっと自分が忙しい日々だったから、ブンブンなんて どうでもよかったのか、、と思うこの頃である。 おばさん記 |