母がくれたバナナ 10歳前後の思い出なのだが私の家の手伝いといえば、子守　これは10歳離れた妹と6歳離れた弟の子守、 家の掃除に、風呂の水汲み、風呂沸かしの「薪くべ」 その風呂の水汲みといったら10歳前後の少女にとっては大変な労働であった。 大抵の家には井戸から樋を通じて入れるのだが我が家は手作りの中途半端な樋で水がまともに入らないから、面倒なのでバケツで入れたりしていた。 一番嫌な仕事であった。 そのイヤな仕事の真っ最中に母は隣の八百屋（昔は何でも売っていた小さな店）からバナナを一本買ってきて「幸子、皆に内緒だよ！」と嬉しそうに私にくれたのである。 なんったって始めてのバナナである、その当時の値段で確か40円と記憶しているが小遣い一日10円だった頃の事だから、おったまげた話である。 その時の味は覚えてないが変わった味と記憶している、食べた後に分厚い皮に付いていたのをコソギとって食べたのがやたらと強く記憶があり、現代的に言えば渋さと不味さのコラボレーション その後大人になってバナナは安くなり目の前にあってもそれほど食べたくもなく、時々あの時のことを思い出す。 母は後年になって気がついたのだが、新し物好きのようであった。よく子供の口には合わなそうな餃子やラーメンを拵えた。餃子の皮やラーメンの麺などない時代にどうやって作ったのだろう。 2010年平成22年4月19日